鈴木由路インタビュー





〜前半〜

ハングエイドの選手インタビュー。今回は、みなさまご存知の空の伝道師、鈴木由路選手です。
最近は競技での活躍はもちろん、テレビ出演にイベントにと活躍されていますが、そんな鈴木由路選手に、ハンググライダー普及活動から、世界選手権について、そしてプライベートまで語っていただきました。
A 夢は、世界選手権でメダルを取ることと、ハングをメジャーにすること
Q 6年前に会社を辞めて、ハングの普及活動をメインにされていますが、手応えはどうですか?
A 一昨年くらいから少しずつ色々なオファーが増えてきています。自分だけではなく、ハング界の色々な人が、地道に様々なメディアに出るなどしてきた影響が、少しづつできているのではないかと思います。日産のCMにハングが使われたり、NASAの板垣さんが笑神様に出たり、磯本さんが女子世界選手権で優勝して色々なメディアに取り上げて頂いたというのも大きなきっかけとなりました。
これからも、一般の人がハンググライダーを見て、知る機会を増やしていきます。
Q メディアやイベントでハングを知った人から反応がありますか?
A まだ始めてもいない高校生から、将来はハンググライダーのインストラクターになりたい、というメールを貰ったこともあります。大学に入ったら、ハングサークルに入って、実際に飛んでもらいたいですね。
大きなメディアに出ないと、なかなかそういう反応はもらえませんから、効果が出ているのかなと思います。
Q 凄い熱意ですね。そこまでの熱意があるわけではない人がハングを知って、興味を持ったとして、ハング界で受け入れ体制が整っているのでしょうか?
A 整っていると思います。色んなスクールから、大会で活躍できるようなフライヤーが輩出されています。ただ、全国各地にある訳ではないので、入校希望者の近くにスクールがない場合があります。もっとスクールが増えていけばよいですね。
また、上手になってソアリングして広く飛びたい、競技に出たい、という人だけではなくて、ぶっ飛びでも楽しい、講習バーンで飛ぶだけでも楽しい、という人を受け入れられるようになって、もっといろいろな人に楽しんでもらいたいですね。
Q 一番最近では、ハングをVRで体験するイベントが好評のようですね
A ハンググライダーとVRはとても相性が良いんです。
ハングの一番伝えたい魅力の一つである雲の上からの景色を味わってもらえるんですが、「実際に自分で飛んだ」という部分が欠けています。タンデムフライトだとそれだけで満足してしまいがちですが、VR体験のこの欠けている部分があるので、「実際に自分で飛んでみたい」に繋がるのではないか思っています。
8月5日、6日にも、藤沢の小田急百貨店でもハングVRをやりますので、ぜひ体験しに来てください。
Q 今はハングの世界チャンピオンでも一般の人に知られているとは言い難いですが、ハンググライダーの競技を多くの人に見てもらうことも、ハングの普及には重要ではないでしょうか?
A 僕の夢は、「世界選手権でメダルを取ること」と、「ハングをメジャーにすること」なのですが、ハングの大会が注目されるようになることも、ハングがメジャーになるためには重要です。ハングの大会に沢山のお客さんに来てもらって、テレビで放映されるようになるわけです。
競技を多くの人に見てもらうためには、大会をやっているだけではだめで、観客が楽しめるような体制を整えないといけません。ビッグスクリーンを出すのはもちろんのこと、屋台を出したり、ステージを用意したり、別の催し物を一緒にやって、多くの人に集まってもらわないと。
それを目指しているのが、十分一でやっているスカイパーティーです。ハングも飛びますが、その他のイベントも充実させています。世界選手権の準備があったので、去年・今年はできていませんが、来年からも続けたいと思っています。
気球の大会では、百万人のお客さんが集まって楽しんでいます。ハングでも、そういう規模の大会はできるはずです。
そして、そういったところでハングを知った人が、平日夕方に都内で気軽に練習できるような施設を作る、というのも目標の一つです。

〜後半〜

鈴木由路選手インタビュー。後編では、競技とプライベートについて語ってもらいました。
世界のトップ選手とレースをしているのが普通に
Q さて、競技の話といえば、前回の世界選手権や昨年のプレ世界選手権などで、いいところまで行ってますが、後一歩届いていないようにも見えます。世界選手権で勝つには何が足りていませんか?
A 海外での競技経験が圧倒的に足りていないです。
Q トップ選手のみなさんはよくそういう話をされますが、海外での競技の経験というのは具体的にはどういうことなのでしょう?
A 自分にとっての当たり前のレベルを上げるということですね。
例えば、ハンググライダーを始めたばかりの人にとっては、最初は飛ぶだけで精一杯で周りを見る余裕もありません。でも、繰り返し飛ぶことで、景色を楽しむ余裕が出てきます。初めてソアリングをした時には、ソアリングすることや、周りの機体に気をつける事で一杯一杯になってしまいますが、やがてソアリング自体のことは考えなくてもソアリングできるようになると、そこからどう飛ぶかを考える余裕が出てきます。
同じように、世界のトップ選手とレースをする経験を積むことで、そのレベルでレースをしている事が普通になって、それ以上を考える余裕が生まれてきます。
フォーブスの大会では、調子は良かったのですが、タスクの後半、100kmを超えてから差がついてきてしまいました。それは、体力もありますが、100kmまではトップ選手が様子見をしながら飛んでいるので、ついて行けるのです。そこを超えて勝負を仕掛けてきた時に、違いがでてきました。
Q 他の選手との駆け引きということですか?
A よくハングは自然との勝負、自分との勝負、とも言われますが、自分はあくまで人との勝負だと思っています。そして、勝負をする上では、最終的には駒の動かし方が重要だと考えています。他の選手の動きを見ながら、勝てるような駒の進め方をしていかないといけません。
すごく基本的なことで言えば、他の選手よりも常に風上側にいられるように意識をする、というのもその一つです。
Q 去年ブラジルで行われたプレ世界選手権は、良い経験になりましたか?
A プレ世界選手権では、最後のタスクの前まで13位だったのですが、最終日に失敗して27位でした。いい順位にいたことで、冷静な判断ができなくなってしまって、失敗してしまいました。いい成績を取る経験を沢山することで、そういう状況でも冷静な判断ができるようになってくると思います。
世界選手権本番と同じエリアで飛べたのも大きいです。どこでサーマルが発生して、どこが勝負どころになるのか、そういった情報を、自分自身の経験として得られたというのは、大きなアドバンテージになります。
Q 世界選手権に向けて特別な準備はしていますか?
A はい。世界選手権前の準備の一つとしてメンタルコーチングをしています。
オリンピック選手等が導入しているもので、大会前にメンタルコーチと呼ばれる方と対話し、自分の思考を整理します。理想を明確にし、それに向かってどのような心持ちで、どのようなことをしていけば良いか、ひとつひとつ明らかにしていきます。自分では整理されてるつもりでもメンタルコーチと対話することで、自分の中に埋もれていた「自分の考え」が再発見されたりするので、必ずコーチングしてもらっています。
Q 世界選手権は期間が長いですし、良いときも悪いときもあると思います。気持ちを維持するために気をつけていることはありますか?
A 気負いすぎて熱くなりすぎると、冷静な判断ができなくなってしまいます。そうならないように、タスクがキャンセルになったときなどには、海外選手たちと遊んだり飲んだりするようにしています。
Q 普段、フリーフライトでほとんど飛びませんよね。以前、フリーフライトで飛んでも意味が無いどころか、勝負感がおかしくなるので飛ばない方が良いと言っていましたが、だから飛ばないのですか?
A 今は、普及活動や講習などで忙しくてあまり飛べていませんが、フリーフライトしたいです。あの頃は飛ばない言い訳でそう言っていたのですが、飛んだほうが良いに決まってますよ。
ただ、レース感という意味では、レベルの高いレースに参加しないと磨かれません。例えば、3m/sのサーマルを捨ててでもスピードを上げる飛びをするというのは、フリーフライトでは、かなり意識を高く持たないとできませんから。
最近は、彼女もいなくて寂しいので、ストレス発散のためにも、出来る限り飛びたいですね。
タイプは素な子
Q 彼女の話が出ましたが、イベントなどで出会いは沢山ありそうです。好きな女性のタイプは?
A 素な子がいいです。飾っていない女性。
Q 35歳も過ぎた男の好きなタイプとしてはいかがなものかという気もしますが、見た目のタイプは?
A 切れ長な目元の女性にはなぜか魅かれますね。
Q で、そんな子とどんなデートを?
A えーと、うーん、下町の商店街で食べ歩き?とかですかね。
Q 35歳も過ぎた男のデートとしては…。飛んでるところだけを見て、地上でのことにはあらかた目をつぶってくれる女性が見つかると良いですね。ところで、会社を辞めて6年になりますけど、どうやって生きているんですか?
A しばらくは本当に大変でしたが、一昨年くらいからようやく生きていけるようになってきました。バイトもしていましたが、講演やイベントなどの話を頂くことが増えてきたのが大きいです。
それまでは、家賃を払う度に、貯金箱に溜まった小銭をかき集めてようやく払えるような状態でした。車や家電も、先輩が結婚する時に引っ越しの手伝いをする代わりに譲ってもらいました。
Q 会社を辞めるのは思い切りが必要だったと思いますが、何がきっかけだったのですが?
A その時会社でやっていたことでは輝けないかなと。何しろデスクワークが嫌いというのもありました。
Q でも、結局最近デスクワークばかりやってますよね?
A 仕事っていうのは、結局、どこに行っても、デスクワークですよ。
Q 最後に、応援してくださっている方々に一言お願いします。
A 応援してくださっている方々には本当に感謝しています。
降りそうになった時や点数を大きく落としてしまった時に、気持ちの糸が切れて投げやりになりそうになるのですが、応援してくれる人がいることを思い出して踏ん張れるんです。時には、みなさんの応援に応えなきゃ、と気負い過ぎて空回ってしまうこともありますが、そういう時は「最善を尽くすことが応援に応えることだ」と言い聞かせます。
昨年から準備しているので、今年は良い成績が出せると思っています。ブログやFacebookなどを毎日更新していきますので、引き続き応援宜しくお願いします!!