砂間隆司インタビュー


1998年 大会初ゴールを決めたレンタル機。スティーブモイスが乗っていたらしい白のエクストラライト147


2000年足尾山オープンカップ(今の飛んでけ〜)。172km飛んで優勝した時の回収された帰り。一緒に写っている太田、野間は今もよく飛んでいる


2001年 オーストラリアに2ヵ月半程滞在した時に、いろいろ教えてもらったロハンと


2001年 オーストラリアボゴングカップ最終日 デイリー11位でゴール


1995年夏 初飛びした頃。キールは見えているけど一応ダブルサーフェイス機のチャレンジャー。ノーズヘビーでフレアーが難しかった


2013年 オーストラリア フォーブス世界選手権 タスク8 191km トライアングルタスク、ゴール直後。大量ゴールで砂間は62位


2015年メキシコ世界選手権 タスク5 わりと難しい138km。最後にかなりスタックするも何とかゴール。デイリー29位


同じくメキシコ世界選手権 タスク6 113km。途中渋めの空域をキープハイで大きなスタックなしで乗りきったら7番手でゴール。得点はデイリー6位ながら、トップのマンフレッドが速すぎて砂間は779点。

〜前半〜

Q. ハングを始めたきっかけを教えてください
A. 大学のサークルに2年から入りました。一度見学に行って、二度目には講習費を払って講習を始めました。
Q. ハングを選んだ理由は何ですか?
A. ハング・パラのサークル(Sky Sailing)が大学にあったことが大きいです。大学のサークル紹介の冊子があって、そこに載っていました。あと、新歓のポスターで、活動日が「飛びたい日」となっていて、心にヒットしました!
Q. どこのスクールでハングを習いましたか?
A. SET茨城 NASAです。
Q. インスタラクターはどなたですか?
A. 講習場は、山岡則正さん。山飛び誘導は、板垣直樹さん。
Q.どんな講習生でしたか?
A. 普通の、やや飲み込みの悪い講習生だったと思います。そのうち飛べればいいと思っていたので、一年目の出席率はそんなに高くなかったです。
Q. 学生の頃の楽しかった思い出はなんですか?
A. いろいろありますが、ハングにはまってから、同じようにやる気のある学生がたくさんいて、毎週飛びに行くのが楽しみでした。
Q. 初飛びはどこのエリアで、機体はなんですか?
A. エリアは足尾山で、機体はファルホークのチャレンジャー145です。
Q. 初飛びの感想を一言で教えてください
A. 自力で空を飛べた事に感動して、すごく興奮しました。
Q. 大会に出ることになったきっかけを教えてください
A. NASAカップ(今のEJC)のお手伝いをしたり、日本選手権のダミーをしたりして、自分より遥かに広範囲を飛んでいる大会に出たいと思うようになりました。
Q. 初めて参加したHS(ポイントシステム)の大会を教えてください。
A. 1997年の阿波踊りオープンカップです。確か1日しか飛べず、砂間はぶっ飛びでした。
Q. 大会で初めてゴールしたのはどの大会ですか?
A. 1998年にオーストラリアで開催されたボゴングカップです。
Q. 初ゴールの感想を一言でお願いします。
A. ゴールできてホッとしました。すごく余裕を持ってファイナルグライドをかけたのに、バレーウインドの向い風が強くなって、わりとギリギリのゴールになったので。
Q. どうやって上手くなったのでしょうか?
A. とにかく飛ぶのが好きなのでたくさん飛んで、上手くなりたいのでいろいろ雑誌の記事とかを読んで知識を得て、自然に少しずつ上手くなっていったと思います。まだまだ、全然下手くそですが。
Q. 砂間さんは、増田の足尾のハング学生の2個上の先輩だったので、学生の頃からよく一緒に飛んでました。特にここ数年、成績が一皮向けたレベルで安定しています。前回のメキシコでは、デイリーでルーマーに勝ったことがあったと思います(増田は、すごく興奮しました)。何か覚醒したきっかけがあったのでしょうか?
A. 他の人に比べ、自分は人生においてハングの優先順位が高いので、継続的に飛び続けることができたのが大きいです。それだけじゃなくて向上心を持って飛び続けることが大事です。成長スピードは、技術レベルが上がると停滞することがあります。でも、なんかのきっかけでレベルが一段上がることもあります。10年くらい前、シークレットオブチャンピオンズ※を読みました。パリスがリフトラインの話をしてくれて、当時板敷で飛んでいた自分は、リフトラインを意識して飛ぶようになりました。それまでは、サーマルポイントやウェイポイントまでまっすぐ飛んでいましたたが(よくシンクにはまっていました(笑))、リフトラインを意識し、コースを考えて飛ぶようになりました。そこが一つのターニングポイントだと思います。
ここ数年の成績の安定は、自信でしょうか。自分の判断で飛んで、うまくいけば勝てるし、そうでなくてもそこそこの成績が取れるようになって、周りの選手に惑わされることがなくなりました。
※シークレットオブチャンピオンズ フライエアーの30号から始まった記事で、初回がロハン、2番目がパリス特集。砂間選手のバイブル。上達のエッセンスが詰まっています。
※ロハン オーストラリアのハングパイロットで、オーストラリアのナショナルズでは、何回も優勝している。2012プレ世界選手権(Forbes)は優勝。
※パリス・ウイリアムス 2000年頃に頭角を現したアメリカのトップパイロット。2002年オーストラリア選手権(Hay)優勝、2014年オーストラリア選手権(Forbes)優勝。現在はニュージーランド在住。
※フライエアー かつて存在した日本のパラ・ハング専門誌 現在は廃刊。  
Q. 特に、ホームエリアが霊石になってから、何か変わってないですか?
A. 霊石は、基本海風が入ってこないと飛べないエリアです。サーマルも出ますが、あまり上がりません(笑)。良いサーマルもありますが、多くのサーマルは小さく風に流される為、サーマルを追いかける良い練習が出来ます。また上限高度が600mから800mくらいの事が多く、リフトラインを意識しないと、ほとんど移動できません。総じて、霊石山でたくさん飛んでいると、特に渋いコンディションには強くなると思います。
Q. フリーフライトで気をつけていることは、何でしょうか?
A. 日照や風の動き、鳥や他のグライダーをよく観察すること。風の流れをイメージすること。
Q. 今までで一番印象に残っているフライトを教えてください。
A. たくさんありますが、特に長距離のクロスカントリーフライトは印象に残ります。2004年オーストラリアのヘイでのプレ世界選手権で240km(150mile)のタスクをゴールしたフライトは楽しかったです。
Q. 今まで飛んだエリアで、ご飯が一番美味しかったエリアはどこですか?
A. 食に対する興味が薄いので思いつきませんが、今までで一番おいしいと思った食事は、学生時代にたくさん飛んでお腹を空かした帰りに、つくば市のとんかつ太郎で食べたカツカレーです。(残念ながら今はお店がなくなっています。)
Q. 飛んでいない休日は何をしていますか?
A. 寝ているか、スーパー銭湯でゆっくりしています。
Q. ハング以外の趣味ありますか?
A. 今はあまりないですが、たまに山登りをしたいと思っています。
Q. 得意料理はなんですか?
A. 袋ラーメンとか。それ料理じゃないし。
Q. 好きな音楽はなんですか?
A. Mr.Children、スピッツ
Q. ハング以外のスポーツをやっていますか?
A. 今はやっていません。
Q. 過去やっていたスポーツを教えてください
A. 小1から中、高 、大学1年までサッカーをやっていました。
Q. 尊敬している人を教えてください
A. 女性ハングフライヤーです。
Q. なぜ女性フライヤーを尊敬しているのですか?
A. スカイスポーツ、特にハンググライダーは、誰にとっても厳しいスポーツだと思います。一般的に女性は男性に比べ、力も弱く、体力もないので、ハンググライダーを続ける上で大変な部分が多いと思います。世界的に見ると女性パイロットは少ないでが、日本には女性フライヤーがたくさんいるし、中にはとても上手なパイロットもいます。ハンググライダーを続けている全ての女性フライヤーを尊敬しています。
Q. ハングでの師匠、メンターを教えてください
A. 山岡さん、板垣さん、今嶋さん、ロハン、パリス他たくさんの方、たぶん一番よかったのは学生時代に一緒に飛んだ仲間がたくさんいたこと。
Q. 学生時代に仲間がいたことは重要ですよね。具体的にどんな仲間だったか教えてください。
A. たくさん飛ばないと上手になれません。板垣さんがSET茨城(足尾)のイントラの時は、たくさん飛ばせてもらいました。当時の学生は、私と同じようにやる気がある人が多く、おはようの挨拶の前に「山に上がろう」というくらいの飛びたがりでした。多くの学生仲間と一緒にたくさん飛んで、切磋琢磨できました。
Q. ハング界でのライバルを教えてください。できれば、日本人と外国の方一人ずつお願いします。
A. 太田昇吾さんと、Jonny Durandです。
Q. なぜ、太田さんとジョニーなのでしょうか?
A. ハングを始めたのが二人とも同じ頃なので、同じように成長しました。ジョニーはもっと成長が早いですが(笑)
※ジョニー オーストラリアのハングパイロット。現在の世界ランキングNO.1( FAIのCIVILランキング1位)で、2016年のプレ世界選手権では優勝している。今回の世界選手権の優勝候補。
Q. 目標としているハングの選手を教えてください
A. Manfred Ruhmer
Q. 好きな食べ物はなんですか?
A. ラーメン、カレーライス
Q. 好きな色は何色ですか?
A. 青
Q. ハングを辞めそうになったことありますか?
A. ハング界、社会の為には私はハングを辞めた方がいいんじゃないかと思ったことはあります。
Q. どうやって乗り越えましたか?
A. すいません。飛ばさせてください。
Q. ハングで挫折したことありますか?
A. 多過ぎて、問題も大きいので書けません。
Q. テイクオフで集中力アップ、気分あげるためにしていることはありますか?
A. おにぎりを食べる。テイクオフの風をよく観察する。のど飴を口に入れる。要はいつものルーティーンをこなしていくということ。
Q. ハングのなかで、どの部分が好きですか?
A. 全部好きです

〜後半〜

Q. ハングで有利な体型、身長、体重などはありますか?
A. 大柄なパイロットは絶対的に有利だと思いますが、判断力や技術で勝負できる部分もあります。私は日本人としては平均的な体型ですが、世界の競技パイロットとしては小柄だと思います。
Q. 好きな旋回方向はありますか?
A. 右旋回の方が得意ですが、左旋回も嫌いではありません。
Q. ハングのために筋トレをしてますか?
A. 特にしていません。フライトした際は、できるだけ長時間飛ぶことでフライトに適した筋肉がついていっていると思います。
Q. 競技フライトする前、ブリーフィングから飛ぶ前に何を考えてますか?
A. ゴールまでのフライトプラン。コースと予想される風向き。どの辺りからファイナルグライドをかけられるか。テイクオフの風、日照、ダミーの動きを観察して、ぶっ飛びのリスクを抑えながら、できるだけ早くテイクオフすること。
Q. 競技フライト中に何を考えていますか?
A. あまり考えていません。風の状況や他のパイロットの動きを感じて、タスクをこなすために何をすべきかを判断して、淡々と実行するだけです。
Q. サーマルソアリング、グライド中はどうですか?
A. ソアリング中は、バリオの音をわりとあてにしています。もちろん体感も含めてですが、常により強い上昇に寄せていくようにしています。ソアリングもグライドも、常にリフトをラインでイメージしています。基本的には風向きに平行なリフトライン、あるいは地形的なリッジに沿ったリフトラインを飛ぶように心がけています。
Q. 競技で勝つには、何が必要ですか?
A. やる気、技術、冷静な判断力、あきらめない精神力、安全マージンを取ってフライトする考え方、運。
Q. (競技)フライトでの得意な技術、または得意な気象条件を教えてください。
A. 国内の、サーマルタイムが短くて渋めのコンディションの時は、早めにテイクオフすることが有利に働くことが多く、相対的な成績は良いことが多いです。
Q.(競技)フライトでの苦手な技術、または苦手な気象条件を教えてください。
A. 典型的な好コンディションでのスピードレース。雲の発達の周期を読んだりするのが下手なので、どうしても保守的なフライトをしがち。
Q. 上の得意な点を伸ばしたり、苦手な点を克服するために、何かトレーニングしていますか?もしくは気をつけていることはありますか?
A. 以前に比べると、ずいぶん雲や風を観察するようになりました。ただ、なかなか予測が当たらないことが多いです。 小さくて弱いサーマルを追いかけることは、霊石山でたくさん飛んでいれば自然に身に着く気がします。
Q. 今回の世界選手権の参加予定の機体、サイズを教えてください。
A. AEROS COMBAT GT 12.7
フレームは2011年11月頃
セールは2014年9月頃
Q. オプションも教えてください。
A. カーボンインサート、10mmカーボンバテン、ムービングCG、テクノーラメインセール
Q. なぜそのオプションを選択したのですか?
A. 注文時に一番良く飛ぶ仕様だと思ったから。
Q. 現在のフックインウェイト、世界選手権でバラストを積む予定ならその重さも教えてください。
A. 現在は80kgくらい。砂間は、世界選手権でバラストを積む予定はありませんが、体重を増やして、少し重い荷物と水をハーネスに入れてフックインで90kgに近づけようと思っています。
Q. 世界選手権は、日本の競技と違って長丁場ですし、連日長時間のフライトで宿舎に帰ってくるのが遅く、十分な睡眠時間が取りにくいなど、過酷だと思います。世界選手権を最後まで戦い抜くために気をつけていること、新たに取り組んでいることを教えてください。
A. 普段の生活から過酷なので、別に世界選手権だからしんどいわけじゃないですね。世界選手権では、だいたいたくさん飛べるので精神的には普段より健全なくらいです。最近はしばしば腰痛に苦しめられるので、腰痛が悪化しないように気をつけています。
Q. 最後に、学生さんやハング始めたばかりの人にメッセージをお願いします!
A. 初飛びして、すぐやめちゃうのはもったいないです。初飛びは、ハングを始めた人の初めの目標だと思いますが、砂間が知っているハングの楽しみの5%くらいでしかないです。長く続けた方が楽しいことがたくさん待っています。自分もソアリングを覚えて、ハングにはまりました。たまにいい飛びができると勘違いしますよね(笑)
シークレットオブチャンピオンズの記事の中で、「ハングの競技は躁鬱病のようなものだ」とゲロルフ※も言っています。いいフライトの次にぶっ飛ぶこともありますしね。興奮しすぎるのも、落ち込みすぎるのもよくないです。
※ゲロルフ ハインリヒ オーストリアのベテラントップパイロット。ハンググライダーの設計者でもあり、現在はモイスデルタグライダーズのデザイナー。2010年ヨーロッパ選手権で優勝。2017年のフォーブスでのハンググライディング選手権で2位。